“どうして?”  『LOVE×2な10のお題』より

 

今年の冬は年明けの後に物凄く寒くなった。
春めいて来てからも引っ切りなしに寒い日が続いた。
でも、それのお陰で、今年の桜は早い目にしっかりしたのが咲いたのだとか。

「桜の花芽は、
 適度に育ったところへ一旦冷えるという刺激を受けることで、
 開花へ向かうそうだ。」

「そうなんですか。」

生物の授業中、担当の先生が余話として口になさったのだそうで。
進さんてお勉強が出来る人だからか、詳しいんですねと口にすれば、

「…このようなことは調べれば判る。」

ほころび始めたばかりの桜を見上げつつ、
視線を合わさぬまま、ぼそり呟いた進さんで。

「そ、そうですか。////////

そっか、そうだよね。
ボクってば、判らないことは調べもしないで人に訊いてばっかだもんな。
ありゃりゃあと赤くなってうつむきかければ、

「そんなことよりも、
 身近な桜がもう咲いてたと、ちゃんと気づくほうが大事だと思う。」

「あ…。////////

あやや…。////////
こ、困ったな。////////
もっともっとお顔が赤くなったのが自分で判る。
まだ少し冷たい風だったのが、止まったように思えたほど。
早朝ジョギングの途中、
川の土手の上のコース沿いに植えられてた桜が、あのね?
ぽつぽつってほころんでたのが、今朝はいよいよの満開間近になってたから。
何日かぶりに逢えた進さんへ、
わあ、いいタイミングで逢えたって、
それもほこほこって嬉しくてしょうがなくて。
そんな浮ついた態度がさすがに届いてしまったか、

 『…何かあったか?』

訊かれてしまったので、つい。

 『あ、あのあのっ、桜が満開ですよね。////////

今年の冬はすごい寒かったけど、いよいよ春だなって思ってしまって。あ、でもでも梅の匂いとか草むらの匂いにも言ってましたよね。ポカポカして来たのへも言ってたかな? ボクって移り気なのかな。前に言ったこと、いちいち覚えてられないなんて、もっと小っちゃな子供みたいですよね。

 『…。』

怒られちゃう訳でもないのにね。
呆れられちゃうのがヤだったのかなぁ。
矢継ぎ早に“付けたし”を色々並べてしまって、
…そしたら止まらなくなっちゃって。
あうう、これじゃあもっとみっともないよぉって、
泣きたくなっちゃってたら、進さんが、
咲きほころぶ桜の下、一緒に立ち止まってくれて。
そいで…さっきの“桜の花芽”のお話をしてくれたの。

 「小早川のように、自分の目や耳で感じ取れる方が…気づける方が意味がある。」
 「あ、や、えと…そんなことは…。////////

褒められ慣れてないから、あのね?
わたたと慌ててしまいかけてたら、

  ―― ぽんぽんっ、て。

大きな手が、肩を叩いてくれて。
落ち着きなさいって宥めてくれて。

 “ああ凄いな、やっぱりvv

進さんこそ、すぐさま判っちゃうじゃないですか。
判ってるから落ち着きなさいって。
すぐに宥めてくれるじゃないですか。
ボク本人でさえ、何が何やら判らなくなっての舞い上がりかかるの、
どうどうって静めてくれる。
あやや////////って恥ずかし紛れに見上げると、
深色の眸で見下ろしてくれるのがとっても優しくて。////////
肩に置かれた大きな手は暖かくって、
すぐ間近になった広い胸元、幅のある肩。
ウィンドブレーカの襟元へ連なる首とかが、
そこも鍛えてのことかゴツゴツと隆起してるのが、
ボクなんかじゃあ比べものにならないくらい大人の男の人っぽくて。
なのに…何でかな?
見てるとそれだけでドキドキするのは、これが男の色香っていうものか。
大人の人みたいといえば、
お顔だってもうすっかり頼もしい男らしいお顔立ちだし。
前髪が額や目許へと落とす陰も、そこに滲んでる汗の匂いも、
何てんだろか、
ボクなんかの砂まみれの汚いだけのとは、何か素材が違うのかな。
どうかすると見てて綺麗なくらいだものな。
汗だっていい匂いだなって思えちゃうしな。


 ………どうしてだろ。
 進さんが好きって気持ちには本当に際限が無い。
 ああ今 とっても好きって感じた、ドキドキした。
 こんな好きになったのって、今までの中で一番大きな“好き”だと思うのだけど。
 昨日の晩に届いたメールを見たときも、一番の好きって思ったはずで。
 倒れそうなくらいにキューンってしても、
 すぐにも次の、もっともっとのがやって来る不思議。

  ―― ボク、このままだと
      進さんがいないと息も出来ない、進さんの中毒になっちゃうよぉ。////////






 「小早川?」
 「あ、えと…。////////

ほややんって見とれてたらば、
それはさすがに“なんで”なのかが判らなかったか、
セナのお名前を呼ばわった進さんだったので。
とはいえ、セナの方だって…ちょぉっと どう言やいいのか判らなくって。
真っ赤になったセナくんからの、
ちょっぴり“助けて”と言いたげな、潤みの滲んだ眼差しは、

 「〜〜〜。////////

おやおや、進さんのお顔へも飛び火したみたい。
そんな二人の頭上では、
川からの風になぶられて、ゆったり揺れる緋色の梢。
まるで、くすすくすすと微笑いさざめいてるみたい。
汗が冷えないうちに、我に返ってくださいねって、
愛でてくれた二人のこと、案じてくれているのかも?


 春の陽がもっともっと暖かくなるまで、
 何とか花が保
てばいいですね。
 そしたら二人、風邪なんて心配しないで、
 いつまでも見惚れていられますのにね…。




  〜Fine〜  08.4.06.


  *あまりに可愛いアイコンを拝見してしまいまして、
   触発されて書きました、惚気の垂れ流しでございますvv

古雪亭サマよりvvか、かわいいvv

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